切符の夢

起きたら夢をハッキリ覚えていた

ここは田舎の港町にある学校の教室の中
進路が決まった学生達が行き来している

だが何にも興味を持てない生徒も居る
その中に俺も居る

様々な事情の者がそこには居る
金銭的に豊かで、どこにも進む必要が無い者
精神的に薄弱で、どこにも進むことができない者
俺にも測り知れない特別な事情でそこに居続ける者
彼らは何歳になっても、ずっとこの、不思議な学校の生徒のまま

俺は中年教師に説明する。
あなたはカードゲームを嗜まれると聞く。人生は遊戯王カードと同じだと考えて欲しい。
例えば、毎ターン500ダメージを与える永続魔法カードがあったとする。
その魔法カードを場に出すことが現在の主流戦術で、
あなたたちの教育では、いかにしてそのカードを場に出すことしか教えることしかできない。
だがそれでは大いなる敵に勝つことはできない。
俺は既に毎ターン750のダメージを与えるための手札が出来てしまっている。
また、特に優秀な人間達は既にターン毎に3000や5000などのダメージを与える手札が出来ていることをここに明らかにしておく。

だが教師は、俺が何を言っているのか理解できない
この話を盗み聞きしていた他の生徒達も同様
「この生徒は頭がおかしい、意味不明な事ばかり繰り返している」という報告を教師は書き、去っていった
(教師相手に遊戯王に喩えて説明する俺は十分に害児だと思うが、夢の中の俺はそれがわからない)

俺は落ち込む
ふと我に帰ると、生徒が一人椅子に座って本を読んでいた
俺はその生徒がまだ教室に取り残されていたことに驚いた
彼は性格的にも知能指数的にもこの教室の世話になるタイプには見えなかったからだ
『ずっと居たのか うるさくしてごめん』
「いいよ 僕には」
「君の言っていることが全ての人に分かるとは思えないのですよ」

(なんでこいつ古手羽入の話し方してんだ..?)


「GentleGirlさん」
「君は人生をカードゲームに喩えました。だから僕もカードゲームに喩えて話をします」
「君はさっき、自分の手札を人に見せ、他の人に新しい戦略を教えようとしました」
「でもそれはルール上禁じられています。忘れないでください、君もまだ、ゲーム中のプレーヤーの一人なのです。部外者ではありません」
「教えてもらったところで、内容を理解できないように、人は創られているのです」
「それぞれの意味を見出すために人生は存在していますから」

「時には受け入れなくてはいけないのですよ」
「多くの人は君ほど物事をよく考えながら生きているわけではないということを」
「それは君にとって辛いかもしれませんが、人は、君にも、僕にも、変えられないのですよ」

『...やっぱりそうだよな』
内心、この少年がまさか俺の思っていることを俺よりも深く理解している事に驚いていた
人は見かけによらないとはこのことだ

「でも、僕には君にもう1つ受け入れてほしいことがあります」

『...?』

「それは、君は君のままで良いのだということです」
「人から分かってもらえないのも仕方がないのかもしれません」
「...手札は、本来、持ち主以外のプレーヤーからは見えないものですから」

「...君の視界には」
「君の視界には、今この教室に天井と壁が映っていないと思います」

『ああ、そのとおりだ。まるで壁も天井も床もない青空教室に居るみたいだ』

「それは心の病ではありません。安心しなさい。
一種の千里眼のようなものが限定的に働いた結果だと思ってください。
君はもうとっくの昔に、ここを卒業しているべき人間ですから、そのように見えてしまうのでしょう」

「行ってください」
「あの教師は、君の帰りをしばらく待つでしょう、もしかしたら長く待ち続けるかもしれません」
「でも君は彼女らを置き去りにして行くべきなのです」
「それでやっと彼女らは悟ることができるです」
「君が必死に伝えようとしていたことの正しさを」

『わかった。ありがとう、不思議な人よ』

俺は何にでも乗れる切符を持っていて
とりあえず一番早く目的地に着く電車に乗って光のような速さでどっかに行った

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