ナルシストと夢

平均年齢30歳のMMORPGを、20代でプレーしていたニートの俺はMさんに買いかぶられていた。
いつだったかこんな話をされた。

Mさん「Gentleさん(筆者のこと)が一人で完結する仕事をしたい気持ちは分かるんだけどさ、
君は普通に会社で働くと出世するタイプだと思う。
ネトゲでも手柄は全部遠慮して人に譲るタイプだし、相手に合わせられるし、他の人の顔を立てようとできるじゃん。
あたしは性格的に無理だけどww」

Mさんはゴリラという仇名で呼ばれる、ギルドマスター。竹を割ったような性格。
ニコ生(今でいうツイキャスやtiktok、TwitchやYoutubeLiveのようなもの)で我が子を抱きながらゲーム配信をしていた。

Mさん「まぁ、目立つのが苦手な性格なんだろうし、
流されがちなところもあると思うけど、ちゃんと大切なことも言えたりする。そういう人って会社に必要なんだよね。
あたしもこのギルドの運営がGentleさんが来てからかなり楽になってる。
あたしは結婚退職してから暇になってこのネトゲ始めるまではアパレルチェーンの本部で人事とか総務やってたんだけど、
Gentleさん自身は一人でやっていく仕事をしたいんだろうけど、人と一緒にやる仕事のほうが向いてると思うんだわ。」

当時の俺は20歳くらいでスーパーの品出ししかしたことがなく、「総務って何?」というレベルだったので、Mさんの話を半分も理解できなかった。
まずMさんには迷惑をかけている意識しかなかったので、この話は右から左に抜けていった。
10年近く経った今になって意味が分かってきた。

Mさん「Gentleさんはナルシストの完璧主義の変態だから何をやっても未完成になっちゃうんだと思う。
でも世の中の9割の人が特別な才能なんてないし、わざわざ他人に自分の能力を証明する必要なんてないとあたしは思う。
自覚ないかもしれないけど、Gentleさんは何もしなくても個性的だし、ドジで忘れっぽいけどたまに頼りになるし、評価もされてるし、一目置かれてる、それに自分で気づいてないだけで持ってる性格だから仕事でも同じだと思う。
低いハードルから順番に越えていくのを悪いことだと私は思わない。
どうしても小説家になりたい!ってなら応援するけど、Gentleさんはそうじゃないし、
自分に向いてるのが何か探してる段階ならまず色んな仕事してみるのが良いと思う。
経済的に追い詰められたら良い小説を書けるのかって言ったらそうじゃないと思うし。
太宰治みたいなのもいるけど、ヘミングウェイみたいな作家もいるし、あたしはヘミングウェイのほうが好きだし
実際Gentleさんの小説読んでみてそっちだと思ったわ」
(ヘミングウェイは自身の戦中、戦後体験に小説の着想を得ている。)

酒飲みながらネトゲしようぜ!という趣旨のギルドだった。俺は飲んでないけど。それなりに廃人が多くて皆毎月20万とか普通に課金してて俺はバイト代をせいぜい5万くらいしか課金できなかったので肩身が狭かった。
でも無理して続けて得たものもあったと思う。
Mさんはバーのママ、つーか皆の母親みたいなもんだった。
もっと早くMさんの言うとおりにしとけばよかったっていう。
しかしMさんみたいな一流の社会人すげーよな、うまいこと乗せてくるんだもん。コミュニケーション能力、人間力がお化け。
お手本だった。

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